美術館の回復効果

現代美術を鑑賞することは、社会の多様性の外縁部に触れる機会になります。


芸術家という人々は、社会のメインストリームというよりは、マージナルな空間を主な視座として、そこからメタ化したり俯瞰したりして、他の人とは異なる切り口で社会を捉えることに長けています。


そのような視座からオルタナティブな解釈や警鐘を投げかけるのが彼らの仕事の一面でもあります。


そんな現代美術との触合いは、狭すぎる範囲に近視眼的にコミットしていた自分の姿や、執着しすぎていた対象が実は案外バカバカしい、ということに気付く良いきっかけになるのです。


社会生活の中で煮詰まってしまったら、一つの打開策として現代美術に力を入れている美術館に行ってみることをお勧めします。


美術館という空間は、示唆の種としての一風変わった創造物たちが我が物顔で鎮座しており、浮世の由無し事など入り込む隙がありません。

「ヘンなモノ」で満たされた空間の中でふと我に返り、「日常自分を支配しているモノたちこそ、よっぽどヘンだ!」という感覚が呼び覚まされます。


美術鑑賞はセレブやリア充の趣味であり、自分とは縁遠いと思われている方もおられるかもしれませんが、そんな方こそ先入観を捨てて美術館に出かけてみてください。


「美しいものを愛でに行く」のではなく、「ヘンなモノに出会ってリフレッシュしに行く」のです。


障害者手帳をすでにお持ちの方は割引が受けられることもあるので、お得に鑑賞できるかもしれません。


日常を支配する社会生活か、それを外縁部から捉えなおした美術品か、一体何がマトモで何がヘンなのか、一度立ち止まって考える機会を得て、心をニュートラルに戻してみてください。


なお注意点として、「非日常」に心身を曝すことは一般に普段と異なる疲れ方を催すので、できればギリギリのスケジュールではなく、特に翌日に若干の時間的余裕を作ってから訪れてみてください。


また、異性と行ったりするとその人との距離感等が気になりすぎて空間に浸れないので、ぜひともひとりで行って、じっくりと作品の世界に没入してみてください。


現実社会とは圧倒的に異なる秩序が支配する空間に身を浸すことは、地理的には日本国内であっても、十分な異文化体験になります。

帰ってきたひきこもり

不登校・留年・中退・長期ひきこもりを経て、35歳で準公務員に受かり、二児の父になったはなし。