居場所に行く

私の経験上、これが一番重要でした。


筆者が初めて行った居場所は、KHJというひきこもりの家族組織が、当事者向けに会議スペースを一部開放している居場所でした。


その時の筆者は26歳で、ひきこもり始めてからすでに4年ほど経っていました。


今でも覚えていますが、かなり急峻で狭い階段を登って上階に上がらなければならない建物の一室で、恐る恐るドアをノックして入室すると、中にいた数人に「こんにちは~」と明るく挨拶されました。


スーツや白衣の人はおらず、当事者もスタッフも20~30代で私服だったので、誰が当事者でスタッフなのかも分かりませんでしたが、初めて参加した私を訝しむでもなく、さも毎回参加しているメンバーのように挨拶されたので、緊張して身構えていた分、拍子抜けしました。


居場所に参加して思い知ったことは、ひきこもりは自分だけではないということでした。

たったこれだけのことに気づいただけで、心の重みが突然半分くらいになったのを覚えています。


大学にも行かず、怖くて外にも出られず、旧友には毎日研究室にいると嘘をつき、自宅でネットやゲームだけをして過ごしているこんなダメなヤツは自分ひとりなのだ、という自責が、一気に崩れました。


ひきこもり当事者の居場所なので当然なのですが、ここでは自身のひきこもり状態に悩んでいることが当たり前で、その場のほとんどの人が、よくある一般的な社会生活とは無縁でした。

2時間のミーティングで他愛も無いことを話し、初回から親しくなれたメンバーも数人できました。


そして、帰り際には「次の開催は再来週です。またいつでもどうぞ~。」と帰されました。

以来、筆者は毎回参加するようになりました。


抑うつ状態も重く、外出できる日もそんなに多くない時期でしたが、次の居場所活動の日に合わせて体調を上向けるよう気を遣う習慣ができました。

後に就労できた際も、居場所活動の日はシフトを入れないようにして、顔を出し続けました。


決してひきこもり状態からの脱却のための具体的な方策を講じる場所ではないのですが、結果的にひきこもり状態から脱した筆者にとっては、最も治療的効果の高い場所でした。


なお、居場所活動に関する情報は、お住いの地域の保健所・保健センター、社会福祉協議会等に集積されていることが多いです。

図書館等のチラシ配架コーナーで見つかることもあります。

もちろん、ウェブ上での検索で見つかることもありますので、ぜひ調べて、訪れてみてください。


また、いろんな居場所活動があり、それぞれ趣旨も若干異なっているため、「自分に合わないな」と感じたら、複数の居場所を試してみることもおすすめします。


帰ってきたひきこもり

不登校・留年・中退・長期ひきこもりを経て、35歳で準公務員に受かり、二児の父になったはなし。