多くの場合、ひきこもり当事者のご家族は「ゴールはアルバイトではなく、正社員だ」と漠然と、かつ断定的に決め込んでおられるので、当事者がやっとの思いでアルバイトを始めても、納得してくれません。
しかし、ブランクが長い状態からいきなり正社員になるのはなかなか難しいですし、「どんな人でも正社員として大歓迎!」という企業は、ブラック企業である可能性もあります。
では、どうすればいいのか?
あくまで筆者の経験ですが、【アルバイトから正社員登用を目指す】というルートが、安全性とメリットの面で優れていると思います。
まず、社内の雰囲気や人間関係、ガバナンス等をしっかり把握してから登用を考えることができます。
職場環境に大きな問題があることが発覚した場合は、アルバイトで終わって、他へ行くことができます。
アルバイトは立場が不安定ではありますが、組織からの脱出という点では利があります。
いきなり正規雇用で入職すると、なかなか逃げられません。
一度安全圏から職場環境をしっかり観察して、吟味することができます。
なお、この際に職場環境に加えて、内部登用制度が存在しているか、実際に運用されているかという点も併せてチェックしておきます。
入職のハードルに係る最も大きなメリットとして、採用段階の一律の基準で弾かれず、採用試験とは異なった軸でも評価してもらえる点が挙げられます。
通常の採用試験では、人事担当者と求職者の接点は僅かであり、極めて限定的な評価基準にマッチしていなければ門前払いですが、アルバイトとしてでも組織内に入ってしまえば、人柄や業務遂行能力と言った、採用試験とは異なる切り口で評価してもらえます。
また、通常のルートでは直接入社・入庁することができない大企業・官公庁へも入ることができることがあります。
通常、大企業の総合職は新卒時の就職活動時における苛烈な競争を勝ち抜かなければ、就くことができません。
新卒で有名大学を出なければ、実質的にスタートラインにすら立つことができません。
官公庁の場合は、公務員試験を受けるための年齢制限があり、超過すると通常のルートは完全に断たれてしまいます。
しかし、アルバイトからの登用であれば、基本的に誰にでもチャンスがあります。
狭き門ではありますが、本来閉ざされているルートでの就職の可能性を創出することができるのです。
そして、アルバイトからの登用には、「仕事のノウハウを学びながら働ける」「収入と勉強を両立できる」という利点もあります。
たとえ新卒で就職したとしても、与えられ職務をこなしながら業務全般や業界のことを勉強をすることは、実は非常に難しいのです。
その点、アルバイトは職務の範囲が非常に限られているため、ある程度は業務に追われずに仕事全体の流れを覚えたり、業界について学んだりすることができます。
もちろん、正社員・正規職員に比べれば待遇に差はありますが、収入を得ながらこうした業務に関する勉強をできることは、非常に有益です。
ガバナンスに抵触しない範囲で、アルバイトをしながら業界内の様々なことに興味を持ち、嗅ぎまわり、学んでいくことを強くおすすめします。
こうして学んでいくことは、組織内・業界内で適切に業務を遂行していくためのリテラシーを涵養し、「よく分かっている人」「デキる人」への成長を促してくれます。
アルバイトでありながら「よく分かっている人」「デキる人」であることは非常に重要で、主婦パート等の層の中にそういう人がいるととても目立つので、人事側にも登用候補者として認識されやすくなります。
また、残念ながら当該の企業・官公庁で直接登用されなくても、業界内の他企業や関連官公庁での就職活動において、何らかのチャンスにつながる可能性があります。
加えて、アルバイトの強みとして、勉強時間の確保も挙げられます。
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